茅野駅から高遠駅を経て、南アルプスの玄関口である仙流荘までを結ぶ登山バス「南アルプスジオライナー号」の運行が始まっています。

その経路に、8月4日より高遠駅⇔仙流荘までの回送ルートを路線化した区間便が設定され、利便性が更に高まりました!

今春より長谷循環バスが減便されたこともあって、茅野駅→高遠駅→仙流荘へと移動した後は、ジオライナーの折り返し便を夕方まで待つ以外に高遠駅へと戻る手段はありませんでした。その救済もあってか、ジオライナーが高遠駅へと戻る回送ルートを区間便として追加運行されることになりました。これにより、午前中に下山したお客さんが高遠駅まで戻れるようになったというわけです。そして、高遠駅からは高遠線で伊那バスターミナルや伊那市駅・伊那北駅まで行けるので、高速バスや鉄道でのアクセスも改善された模様です。


・・・あぁ、また良からぬことを閃いてしまった。


今年は木曽福島駅と高遠駅・仙流荘を結ぶ「パノラマライナー号」が運行されていません。このため、名古屋から公共交通を使って南アルプスにアクセスするには少しハードルが高くなります。

では、高速バスならどうか?

ちょいと時刻表を調べてみると、名古屋からの高速バスに乗って伊那に入り、そこから高遠線→ジオライナーと乗り継いだら、南アルプスにアクセスできるではありませんか!

そんなわけで、私は愚かにも、高速バスを使ったジオライナー乗り継ぎルート『高速バス名古屋線-南アルプスジオライナー号乗り継ぎチャレンジ』を実行してみようと思い立ったのでした。

旅程の概要は下記の通り。

①信南交通の名古屋行きで伊那BT→瑞浪天徳BSへ移動
②名鉄バスの箕輪行きで瑞浪天徳BS→伊那BTへ折り返し
③ジェイアールバス関東の高遠線で伊那BT→高遠駅へ移動
④南アルプスジオライナー号に乗り継いで高遠駅→仙流荘へ移動
⑤ジオライナーの区間便(新規設定)で仙流荘→高遠駅へ折り返し


さすがに名古屋からの乗車を楽しむことはできませんが、瑞浪天徳で名鉄便に乗り換えることによって、朝に名古屋を出発する旅が疑似体験できるというわけです。時刻表的には非常にタイトですが、なんとかなるでしょう。そんな楽観論を掲げ、私は早朝の伊那バスターミナルよりこの日のチャレンジを開始したのでした!

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チャレンジ①
6:00 伊那BT→8:07 瑞浪天徳


名古屋-伊那箕輪線SN14406便
信南交通1387号車(2TG-MS06GP)


旅の始まりは信南交通の名古屋行きです。まずは伊那バスターミナルから乗り換えバス停の瑞浪天徳を目指します。折しも、同社では最新型となる令和顔エアロエースが来てくれました!

LCDディスプレイに表示される「名鉄バスセンター行きです」の文字が新鮮味を感じます。


バスは順調に中央道を南下し、恵那峡SAで8:00まで休憩となりました。







単に名古屋線に乗り継ぐことが目的なら瑞浪天徳まで行かず、その手前の中津川や、なんなら長野県内で降りても良かったんですが、恵那峡でじっくり撮影したかったのでこのルートにしてみたのです♪

乗務員さんが少し長めに休憩を取ってくださったので、10分差で箕輪を出てきた阪急観光バスのアルペン伊那号が追いつきました。

お陰で、こんなコラボショットを頂くことができました。

恵那峡SAを出てしばらく走ると、瑞浪天徳バス停に到着。信南交通1387号車とはここでお別れです。

到着時刻は8:16(定刻+9分)だったのですが、乗り換えには十分間に合います。

そそくさと下り線のバス停から上り線のバス停へと移動し、バスを待ちます。

考えてみたら、瑞浪天徳BSを利用するのは初めてです。こんな感じなんだなぁと周りの景色を眺めていたら、次に乗り継ぐ名鉄バスがやってきました。


チャレンジ②
8:23 瑞浪天徳→10:38 伊那BT(※菅の台経由)


名古屋-伊那箕輪線MB14507便
名鉄バス2013号車(BKG-MS96JP)


ここから本日の乗り継ぎチャレンジが本格的にスタートします。といっても、さっき来たルートをそのまま折り返すだけなんですが(^^;

車両は名鉄バスの中では古参クラスとなる2010年式エアロエース。同社からも徐々に数を減らすBKG-エアロエースに乗車できた幸運もさることながら、図らずも最新型の令和顔エアロエースと初期型のエアロエースを乗り比べる旅となりました。

瑞浪天徳を定刻通り発車したバスは、しばらくして恵那峡SAへと入っていきます。



私はほんの40分前に反対側(下り)に滞在していたのですが、細かいことを気にしてはいけません。

休憩中のSAではこんな並びが。

右手前から、新宿-名古屋線を担当する名鉄バス2352号車、私の乗る名鉄バス2013号車、名鉄観光バス、更には最奥部に名鉄運輸が並ぶ光景となりました。まさに名鉄4並び。いいものを見せて頂きました。

10分強の休憩の後、バスは再び中央道を走ります。

駒ヶ根ICで高速道路を降り、7月~10月だけの季節運行ルートである菅の台バスセンターへ。

やはりというべきか、登山に来られたお客さんが何人か降車されました。

その後もバスは順調に一般道を走り、定刻通り伊那バスターミナルに到着です。

ここの乗り継ぎが今チャレンジ最大の難所だったのですが、お陰様で無事クリアです!


チャレンジ③
10:45 伊那BT→11:07 高遠駅


高遠線(高遠さくらの湯行き)
ジェイアールバス関東L538-00509号車(KC-UA460HAN改)


高遠線にはだいぶ余裕を持って乗り継げました。車両は元・東急バスのUAノンステです。高遠線は今年4月より伊那バスターミナル発着となったことから、高速バスや他の路線バスとの接続が非常に良くなりました。

お馴染みの路線・見慣れた景色ではありますが、今回のようにトリッキーな旅で利用するとまた新鮮に見えてくるのが不思議です。

バスに揺られること20分強、定刻通り高遠駅に到着となりました。

目の前には既に、茅野駅からやってきた南アルプスジオライナー号が時間調整をしていました。高遠線との接続も兼ねた待機となっているようです。ここまで来たら勝ったも同然!私は嬉々として目の前に停車するジオライナーに乗り継ぎました。


チャレンジ④
11:10 高遠駅→11:30 仙流荘


南アルプスジオライナー号(仙流荘行き)
ジェイアールバス関東L538-05503号車(ADG-RA273MAN)


ジオライナー号にはジェイアールバス関東で唯一と思われるRAワンステが入っていました。ジオライナーは毎年この車が担当しているようです。

車体の側面には「南アルプスジオライナー 仙流荘行き」のステッカーが貼られていました。

7月に乗車した時にはなかったので、最近貼り付けられたものだと思います。

バスは定刻通り高遠駅を発車。
朝は雨が降っていましたが、天候が急速に回復し、すっかり真夏の風景となりました。


美和ダムの上流部までやってきました。普段はバスで通ることがないルートなので、車窓の景色が楽しいです。



ダムに土砂の堆積を防ぐためのバイパストンネルの取り入れ口となる分波堰や、三峰川支流の黒川沿いにある水力発電所を眺めつつ、バスは仙流荘へと向かっていきます。

終点の仙流荘には定刻通り到着です!
登山に見えたお客さんは、ここで北沢峠へと向かう南アルプス林道バスに乗り換えます。

これまでだったらバスはこのまま回送となるのですが、今年はここから更に高遠駅までのルートが路線化されたため、折り返しのためにしばし待機します。

折り返し待ちの間にちょいと撮影。

夏山の景色に佇む日デRAというのも、この時期だけ見られる特別な光景ですね。


チャレンジ⑤
11:35 仙流荘→11:55 高遠駅


南アルプスジオライナー号(高遠駅行き区間便)
ジェイアールバス関東L538-05503号車(ADG-RA273MAN)


さあさあ、ここへ来てようやく今回の旅のメインが登場でございますよ!この区間便に乗りたいばかりに今回の如き無茶苦茶なチャレンジが始まったわけですから、断固外すわけにはいきません!!

さっき乗ってきたばかりのバスに再び乗り込み、仙流荘を出発です。


バスはほどなく高遠大橋を経て、風情に満ちた高遠町の市街地へ。



当然ながら往復ともに同じルートを通るわけですが、行きと帰りで座席を変えたので、車窓の景色を満喫します。

終点の高遠駅には定刻通り到着です。

乗り継ぎ時間が非常にタイトな旅ではあったものの、『高速バス名古屋線-南アルプスジオライナー号乗り継ぎチャレンジ』を見事完遂することができました!

これにより、名古屋からの高速バスが大幅に遅れない限り、高速バスを利用した南アルプスへのアクセスが可能であることが確認できました。道中のハラハラも含めて、私としてはとても楽しい旅ができたなぁと思います。

また、仙流荘⇔高遠駅の区間便が設定されたことにより、ジオライナーの全区間完乗を果たすこともできました。仙流荘から高遠駅までの区間は実際に乗ってみるとあっさりしたルートですが、この区間を走る路線バスが大きく減便された今、仙流荘から高遠駅に直接アクセスできる手段としては非常に大きいと思います。今夏の登山バスは新型コロナウィルス感染症の拡大などで色々と制約を受けつつも、その分は様々な楽しみ方が生まれたなと思えた今回のチャレンジでした。

最後になりますが、今回の乗り継ぎ旅で安全・快適に送り届けてくださった各社の運転手さん、本当にありがとうございました!

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おまけ。
高遠駅では、ジオライナーと国鉄復刻カラーとのツーショットも実現しました。

どちらもジェイアールバス関東中央道支店の名物車両とあって、存在感がすごいですね!

こんなところも、この地域の路線バスならではの面白さかなぁと。  

茅野駅から南アルプスの麓までを結ぶ季節運行路線 南アルプスジオライナー号 が運行を開始しました!

昨年は新型コロナウィルス感染症の関係で運行中止となってしまいましたが、今年はめでたく運行されるようになったようです。2021年度の運行期間は7月22日(木・祝)~9月26日(日)までで、7月22日~8月16日までは毎日運行、8月21日~9月26日までは土日祝運行となる模様です。例年に比べると運行期間が短いですが、限定的ながらも運行してもらえることが何よりもうれしいです。

ただし、ジオライナーと同じく「南アルプスライナー号」の一角を務めるパノラマライナー号(木曽福島駅-仙流荘)に関しては、今年の運行は行われない模様です。

詳しい時刻表やルートなどは、下記の伊那市観光協会のHPに記載があります。

・南アルプスライナー号2021
 https://inashi-kankoukyoukai.jp/contents/archives/36184


ルートをざっくり説明すると、茅野駅から杖突峠を超えて伊那市へ入り、高遠駅を経由した後、南アルプスの玄関口である仙流荘までを直結しています。所要時間にして1時間10分。仙流荘からさらに北沢峠までを結んでいる南アルプス登山バスとの接続も完璧です。

運行開始の報を受け、私も早速乗りに行ってみました。といっても、昼間に全ルートを乗り通してしまうと夕方まで帰ってくる手段がないので、茅野駅から高遠駅までの区間乗車としました。今回はその時の模様をお送りしていきたいと思います。

※8月4日より仙流荘⇔高遠駅間の運行便が追加されたので、午前便で茅野駅から仙流荘へ乗り通しても高遠駅まで戻ってこれるようになりました。

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乗車日は7月の連休中。JRに乗って茅野駅に降り立つと、駅構内は登山バッグを抱えた大勢のお客さんで賑わっていました。多くのお客さんは八ヶ岳や車山などを目指す様子でしたが、その中の一部は、ジオライナーを利用して南アルプスに向かう方々のようです。季節運行のバス路線をちゃんと把握して登山計画を立てられているあたり、さすがだなぁと感心しきりです。

10時ごろ、この日のジオライナーを担当するジェイアールバス関東の車両が回送されてきました。車両は中央道支店所属の日デRAワンステです!

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南アルプスジオライナー号
10:20 茅野駅発→高遠駅経由・仙流荘行き

ジェイアールバス関東L538-05503号車

車種:日産ディーゼル スペースランナーRA
型式:ADG-RA273MAN
年式:2005年式
ナンバー:松本200か1433
所属営業所:ジェイアールバス関東 中央道支店

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中央道支店の名物車両(だと個人的には思っている)L538-05503号車です!

この車両は前まで「松本230あ5503」のナンバーを付けていましたが、昨年秋から今年の春まで一時的に宇都宮支店に出張していた関係でナンバーが変わり、現在は「松本200か1433」のナンバーに変わっています。

ジェイアールバス関東では極めて希少なRAワンステですが、そんな車両に何も考えずに乗れてしまう地域柄に感謝しつつ、早速車内へと入っていきます。

定刻となり、バスが動き出します。

茅野駅を出て早速、この路線の見せ場である杖突峠に突入です!


つづら折りのカーブが続く杖突峠は普通車で登っていても割と苦しい登りです。しかし、私たちを乗せたバスは、300馬力のパワーを誇るMD92エンジンの頼もしい咆哮と共に、峠道をするすると登っていきます。


峠の頂上が近づいてくると、ちょっとだけ景色が開けてきました。ここから茅野の街並みを見下ろすことができます。


頂上のほど近くにある杖突峠バス停を過ぎると、展望台やカフェなどが楽しめる「峠の茶屋」が見えます。

連休中ということもあり、多くの車やバイクなどが休憩していました。

峠の茶屋を過ぎると、茅野市から伊那市へと入っていきます。伊那市に入るとすぐに、今度は下り坂となります。


排気ブレーキやシフトダウンを駆使しながら、バスはスムーズに坂を下っていきます。これまで走ってきた林の中の道とは景色が一変し、今度は緑のまぶしい川べりの道をゆったりと進みます。


途中、道路の拡張工事区間を通過しました。細い旧道から分岐した新道は、将来的に主ルートとして使われるようです。


三義・長谷循環線の的場バス停を過ぎたところで国道152号線からいったん離れました。高遠中学校前を経由して高遠本町へと向かうようです。

前に乗った時は、写真の横一直線に走っているバイパスを真っすぐ走っていったのですが、今年のルートは違うみたいですね。

旧道から高遠本町に出ます。まもなく降車バス停である高遠駅です。


ほどなくして高遠駅に到着!
茅野駅からは50分弱。高遠駅までの運賃は1,420円です。

バスはここから終点の仙流荘を目指して走っていきますが、私は残念ながらここで降車としました。高遠駅で降りるのは私くらいかと思っていたら、私のほかにも茅野駅から高遠駅までの区間利用者がチラホラといました。茅野から高遠までを結ぶ、地域の足としても活躍しているようです。途中のバス停で停車しない直行便であるということも、この路線の魅力の一つなのかなぁと思いました。

ともあれ、南アルプスジオライナーの乗車旅はここで終了です。杖突峠という難所にも関わらず、快適かつ安全に送り届けてくださった運転手さん、どうもありがとうございました!!

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近くのお店でお昼を食べて高遠駅に戻ってくると、先ほどお見送りしたL538-05503号車が高遠駅で待機していました。



L538-05503号車はここで夕方まで待機し、今度は登山を終えたお客さんを仙流荘から茅野駅へと運ぶ任に当たるようです。茅野駅→仙流荘行きの利用率を見る限り、帰りもきっと大勢のお客さんが利用されることでしょう。

長いようで短い信州の夏山ですが、感染症対策も万全に、今シーズンも多くの方に楽しんで頂けるといいなと思っています。